沖セイ転生ものです。
※注//セイちゃん転生して、正真正銘の男になっちゃってます。
それでも良いという方だけどうぞ。
輪
廻
「ねぇ、総ちゃん。」
「何ですか?清。」
「課題やって?」
「自分でやりなさい。」
「ちぇ。総ちゃんのケチ。大親友の俺の課題くらいやってくれても・・・」
「大親友だからこそですよ。私は可愛い子を甘やかす主義はありませんよ。」
「意地悪だな、総は。」
「おや、今気が付きましたか?」
そう言って2人は笑いあった。
総と清が出会ったのは、高校に入ってからである。
その時の事を総は今でも鮮明に覚えている。
蝉が煩く鳴く夏。暑さのせいだろうか、授業に身が入らなくて総は窓の外を眺めた。
すると、校舎側から一人の女性が出てくる。
その女性は一瞬こちらを振り向くと、総司と目が合う。そして、何事も無かったかのように足早にその場を立ち去った。
総は女性から目が離せず、ただ去った方をいつまでも眺めていた。
先程から感じる胸の高鳴り。何故か、もう一度会いたいと強く思う。
その日は女性の事で頭が一杯で更に授業を聞ける状態では無くなった。
翌日、結局、昨日の女性の事が忘れられないまま、放課後、図書室へ行くと、昨日の女性と瓜二つの男性が座って本を読んでいた。
瞬間、総司の心臓は跳ね上がる。
ゆっくりと、その男性に近付き、さり気無く隣に座ると、思い切って声を掛けてみた。
「あの、すみません。もしかして、双子の妹さんとかいらっしゃいます?」
男性はこっちを向いて、怪訝そうな顔で総をみた。
「誰ですか、貴方。」
「え、あ、すみません。私は沖田って言います。3-Dの沖田総。昨日、貴方によく似た女性を見かけたものですから・・・」
「え・・・あぁ、それ、俺だよ。多分。」
総は一瞬、耳を疑い、何かの聞き間違いだろうと、思わず、聞き返しました。
「・・・昨日の女性はあなた・・・?でも、だって・・・」
願わくば聞き間違いであって欲しいという総司の願いは崩れ去った。
「うん、そうだよ。残念だったね、俺、男なんだ。ほら、もうすぐ文化祭だろ?うちのクラス、女装喫茶とかするんだよ・・・」
その後、男性が何を言っているか総には全く耳に入らなかった。
ただ、その男性の名前は清だという事だけは頭に残っていた。
自然と、目頭が熱くなるのを感じる。
一目惚れしたした女性が実は男性だったなんて、これが、泣かずにいられるだろうか。
(・・・。)
何だか、この場から一刻も早く立ち去りたかったが、こちらから話しを掛けといて、すぐに立ち去るのは些か気が引けた為、泣く泣くこの場に残った。
(・・・初恋は実らないって、本当なんですね・・・。)
と、総は溜息を吐いた。
「今年も、桜の季節は終わりですね、先生。」
セイは洗濯物を干しながら、傍の縁側に座りながらみたらし団子を食べている総司に語りかけた。
総司は団子を食べながら気のない返事をした。
「・・・そうですね。」
いつもと様子がおかしい総司にセイは首を傾げる。
「先生?どうかなさいましたか?」
総司はすっと立ち上がると、セイに近づく。
そして、そっとセイの頬に触れると、
「やっぱり、貴女は綺麗ですね。」
総司の突然の言動にセイは胸が高鳴り、顔が熱くなるのを感じる。
「い、い、いきなり、何を・・・!」
一寸先には落ちがあると分ってはいても、期待してしまうのが悲しい乙女心。
今まで、この野暮天にどれだけ期待を持たされてどん底に何度突き落とされたことか。
数えたら切りがない。
それでも、この男が好きで好きで仕様がないのだ。
「いつの頃だったか、私の見合いの日に女子の姿に戻って様子を伺に来たでしょう?今、その時の神谷さんを思い浮かべてたんです。」
「先生、何を?」
セイは総司の話の意図が次第に読めてきて、思わず、眉を潜める。
もう何度繰り返したか分らないこの会話のやり取り。
セイは流石にうんざりし始めていた。
いつもいつも、この会話の後には自分が隊に残ってくれてよかったなどと言ってはいるが、本当のところはどうか分らない。
本当は、自分の事が邪魔ではないのかと勘ぐってしまう。
セイはそこまで考えて、若干目頭が熱くなるのを感じた。
「神谷さん・・・。私の妻になってくれませんか・・・?」
途端、総は勢いよく身体を起こす。
嫌な汗が出て、気持ちが悪い。
膝を折り、顔をうずくめ、深く溜息を吐いた。
外はまだ暗く、時計を見ると、深夜2時を回っていた。
ふと、横を見ると、涼しげに眠る清の姿。
一瞬、何故、清がここにいるのだろうと考えて、思い出す。
(そう言えば、私の部屋で飲んでたら、終電無くしてそのまま泊まったんでしたっけ・・・。)
そっと、清の頭に触れる。
自然に口元が緩むのを感じた。
「全く。憎たらし程、可愛い寝顔ですね。」
そう呟くと、清は身じろぎ、ゆっくりを目を開けた。
すると、まだ、焦点の合ってない虚ろな目でこちらを見た。
その表情がさらに可愛らしく、総は思わず、小さく笑った。
「・・・総?」
まだ、寝ぼけているのか少し、甘えた声になっている。
何だか、それがくすぐったくて総は、ん?とだけ返事を返した。
「俺、夢見てた。」
「どんな夢ですか?」
「・・・夢の中で俺は女なの。それで、すっごい好きな男がいて、その人の為なら命だって惜しくないって程好きなの。」
「・・・。」
「でも、その人はすごい鈍感で、いつも俺は泣かされてた。」
次第に、総の心臓の音が煩くなる。
総は恐る恐る口に出した。
よもや、よもやと思いながら。それでも、何処かそうであって欲しいような、欲しくないような。
そんな複雑な気持ちが自然と声を震わせる。
「・・・清。その好きな人の名前は?」
「沖田総司。」
気が付けば、総の頬には涙が伝っていた。
and that's it?