ごめんもう笑えない。
桜が舞い散る季節。
私と夫の総司様は庭の桜を縁側に座りながら眺め、夫の大好きな甘味を一緒に食していました。
「・・・セイ?」
先程から、私が視線を落としているせいか、総司様は心配そうに私の顔を覗き込んできました。
総司様の春の日差しの様な眼差しに私は一瞬、泣きそうになりました。
しかし、そこは必死に堪えて、私は顔を上げて総司様の目を見詰めました。
「総司様。実は、他に好いた殿方が出来ました・・・の、で・・・」
刹那、私と総司様との間に強い風が吹いて、草木を揺らしました。
思わず、私は瞠目して言葉を切りました。
総司様が夫があまりにも綺麗な笑顔を向けるので。
「セイ・・・いえ、神谷さん。私は貴女の幸せを願っています。」
気が付けば、私の頬に一縷の涙が伝っていました。
(分かってた。貴方はいつでもそうだった。分かってた・・・けど・・・)