本気の恋は 
     
     止めよう
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
―・・・あぁ、神谷さん。
漸く、想いが通じ合えたと言うのに、貴女を置いていく私を許してください。
私はいつまでも貴女の幸せを祈っていますよ。
貴女なら、きっと大丈夫。
私はいつでも貴女を見守っていますから。
 

―・・・全く、いつまで泣いてるんですかねぇ、この娘は。
いい加減私の事なんか忘れて自分の為に生きてくださいよぉ。
じゃないと、私はいつまでも貴女の事が心配でおちおち成仏も出来ないじゃないですか〜。
でも、今はお泣きなさい。
気が済むまで。そして、いつか、その泣き虫が無くなればいいですね。
大丈夫。貴女なら大地にしっかり、根を張り、生きていけるでしょう。
 

―・・・漸く、見つけたんですね。貴女の居場所を。
流石、貴女が見込んだだけの事はありますね、良い人を選んだと思います。
それに、とっても綺麗ですよ、その白無垢姿。
出来れば、生きている内に目に焼き付けておきたかったです。
あ、ほら、また、泣き虫が始まりましたね。
でも、その涙を拭うのはもう私の役目ではないんですよね。
もう、あの泣き虫の木には通わなくなるんですね。
そう思ったら、嬉しいような寂しいような複雑な気分になります。
これからは、私が隣で見守る必要もなくなるんですね・・・。
 

―・・・もう、貴女が私の事を思い出すことはないでしょうね。
それでいいんです。
少しだけ切ないですけど、貴女の幸せは私の幸せですから。
もう貴女の体は、既に貴女一人のものではないのだから。
貴女の事だから、これから忙しなく動き回るんでしょうね。
これから生まれてくる新しい命のを守る為に。
想像したら少し、笑えて来ます。
でも、変ですね。
ずっと望んでいたことなのに・・・。
忘れてくださいなんて言いながら、貴女が私を忘れていく姿を見てたら、どうしようもなく悲しい気持ちになるんです。
だから、お願いです、神谷さん。
一時でもいいんです。
少しだけでも私の事を思い出してくれればそれだけで私の心は中は幸せになれます。
 

゛ねぇ、神谷さん。゛
 

(風が優しく、私の頬を撫でた。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お題提供:確かに恋だった

切ない恋10題

 

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